FRBが異例の低金利を少なくとも2013年半ばまで継続する公算が強くなった。また、欧州銀の破綻の噂や仏国債の格下げの憶測などが市場に不透明感を与え、株価も各国で大幅に反落する中、金には安全資産買いの資金が流入、12月限は一時1800ドル台に上昇するなど最高値更新の動きが続いている。
金相場への流入は、個人投資家よりは機関投資家に顕著に見られるため、投資資金が莫大だ。それが金相場の高騰を招いている。本来、ソブリンリスクは金融危機の観点からも解消されるべきだが、EUやアメリカにとってはメリットもある。日本の<失われた10年>を研究した結果、デフレがいかに国内経済へ悪影響を与えるかを学習した。そのため、ソブリンリスクを利用してユーロ安・ドル安に誘導、国内のデフレ回避策と考えたのである。つまりEUやアメリカが通貨安を政策として行う限り、ソブリンリスクは解消されず、金相場への投資資金流入は続くのである。
これに対し銀相場はどうなのだろうか。銀は金よりも工業需要が多い金属である。金よりも電気抵抗が低いため、電子部品や太陽電池などに多く使用されている。それでも銀は他の金属に比べ、価格上昇はあまり見られなかった。しかし昨年10月くらいから上昇を始め、今年4月に高値をつけたが、5月には大暴落した。理由は来年に大統領選挙を控えるオバマ大統領が、銀の先物取引における証拠金を引き上げたからである。
なぜ、証拠金を引き上げたのか?先物市場では様々な商品が価格上昇をつづける中、石油の上昇も顕著だった。しかし、石油価格が上昇を続ければ、国内経済の観点から現職の大統領にとって大きなマイナスとなる。直接、石油相場に手を入れることは露骨なためやらなかったが、先物市場での価格上昇の象徴ともいえた銀相場に手をつけることで、先物市場全体への波及効果を狙ったのだ。今後も石油価格のコントロールのために銀相場の証拠金を上げる可能性は高い。ちなみに金の証拠金引き上げについては世界中の中央銀行が保有しているため、聖域として手はつけられない。つまりは金相場の高騰はしばらく続きそうである。
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