2013年2月2日土曜日

ユーロ高、痛し痒し…

EUR/USD(Day)
ECB が実質的にソブリン債、ひいては単一通貨ユーロ の後ろ盾となったことに大いに助けられ、銀行の経営状態は数カ月前に比べて明らかに好転している。問題は、銀行と国家の借り入れが容易になったのに、市民と企業は恩恵にあずかっていないだ。 

銀行がLTRO資金の返済を急いだことが一つの証左だ。ECB は25日、2011年12月実施のLTROについて278の銀行が合計1372億ユーロ を早期返済すると発表し、30日に実施された。 この額は市場の予想を大幅に上回り、銀行自身の資金調達環境が安定化していることを示した。しかし早期返済は、それ自体が金融システムから流動性を引き揚げるという逆説的な影響をもたらす。 

銀行間貸し出し金利であるEURIBORにこの影響がはっきり見て取れる。3カ月物EURIBORは0.23%に上昇。一見すると微細な変化だが、年初に比べると20%も上昇している。絶対的な数値は大きくなくても、経済のファンダメンタルズに照らして正当化される動きではない。

 気掛かりなもう一つの問題はユーロ高で、対ドルで年初来2%以上、昨年8月以来では12%以上、それぞれ上昇している。ここでもECB のあからさまな「保証」政策が逆説的に現れている。市場の信頼感を高めることで、金融環境の引き締まりを招いているのだ。ユーロ圏の輸出企業は危機感を感じるだろう。特に競争力で劣るポルトガルやスペインなどは、通貨の増価ではなく減価が必要な状況だ。 

圧力の緩和は望めそうもない。米連邦準備理事会(FRB)は拡張的政策の継続を発表し、日銀 は従来より高い物価目標を公表して資産買い入れの拡大を計画。近年で3度目の景気後退が視野に入る英国では、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)が追加緩和を行う可能性が十分ある。

 仮にECB が金融緩和で対応したり、口先介入でユーロ 相場を押し下げれば、楽観論と各国中銀の緩和によって沸き立ちつつある世界市場にとって差し引きで好影響をもたらすだろう。 とはいえ、ECB 当局者の口ぶりを聞いても、過去の実績を見ても、いかに経済への打撃が大きくとも早期利下げは期待できないようだ。

ECBが行ってきたのがユーロ の救済だとすれば、それは痛みを伴い、不和を生じさせ、ECB自身に安全地帯から大きく踏み出すことを強いた。 これは欧州の実体経済にとって、今後もなお痛みが続くであろうことを意味している。

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