2011年11月10日木曜日

一難去って、また一難

20111110

政治混乱と、それに伴う緊縮財政政策などの遅れが懸念されたことからじり安になっていたイタリア国債は、昨日大手債券取引精算会社のLCHクリアネットがボラティリティの高まりや、流動性の低下を理由に取引証拠金比率の引き上げを発表したことから、大きな節目と見られていた7%台に乗せ、一気に7.45%付近まで上昇した。
 これまでEUに財政支援を仰いだギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3ヶ国は10年物国債利回りが8%程度まで上昇した時点で支援を要請する、というパターンを繰り返している。
ただしイタリアは、ギリシャなどとは少し事情が違う。債務残高の規模自体は、日本、アメリカについで世界で3番目に大きいのだが、対GDP比で見ればギリシャの約160%と比べると128%程度。そして一番の違いは、イタリアのプライマリー・バランス(基礎的財政収支)は黒字になっている、ということだ(=新たな借金は生まれない)。
 しかし、プライマリーバランスが黒字だからと言って安心はできない。新たな債務は生まれなくとも、これまでの債務(国債)の借り換えに必要な利払いが増えてしまえばその分だけ債務が増えたのと同じことになるので、今のように2年物から30年物まで押しなべて7%を越える利回りとなっている状況が続けば、来年大量に償還期限を迎える国債の借り換えで、これまで以上の利払いの負担が生じることになって、最終的な財政赤字は増えることになる。
 そして、もう一つの不安材料が、ユーロ圏全体の成長見通しがこれまでよりも大きく引き下げられていることだ。当然景気が悪くなれば、税収が思ったよりも少なくなる。
こしたことが重なってイタリア国債を買いたいという投資家がいなくなってしまえば、ECBが無限にイタリア国債を買いでもしないかぎり、相場は崩れ、金利が上がってしまう可能性がる。そうなると、売るつもりがなかった投資家でも、相場が下がることで評価損が膨らんでイタリア国債を売らざるを得ない状況に陥ることになります。
 金融市場では理由の如何を問わず、相場の動きそのものが次の相場を決定してしまうことが多々ある。イタリア国債もそうならないとは誰も言えない。

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