2011年6月5日日曜日

軍産複合体とイスラム

ウサマ・ビンラディン容疑者

国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者(54)が殺害された。場所はパキスタンの首都イスラマバードの北約60キロのアボッダバードにある隠れ家で、米中央情報局(CIA)と米軍特殊部隊(SEALs)15名が4機のヘリコプターで急襲作戦を展開、逮捕・拘留することなくその場で射殺したのである。作戦終了後、オバマ大統領は「米国はイスラム教と戦っているのではない」と、イスラム教徒に理解を求めた。

だがこのニュースを聞いたとき私は奇異な感じがした。欧米メディアはその影響力で、9.11以降イスラムに対する嫌悪を煽り立ててきたではないか。アメリカは1990年代に最大の敵ロシアを失って戦う敵がいなくなった。しかしイスラムのテロリストが敵視されはじめたのがその頃からだったと記憶している。まるで「軍産複合体」が生き残るために、強敵を作り出したかのようにも見える。

敵がいなくなれば大量の武器が消費されずに、多くの社員が失業するからである。第二次世界大戦以降、ロッキード、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミックスなどが主要軍需企業になっていて、これらの幹部が政治家になり軍事大国アメリカを動かしてきた。共産主義という「敵」でなくなったのなら、早急に「次の敵」を必要としていたのが軍需産業だった。彼らにとって戦争に負けるのが危機ではなく、敵がいなくなるのが最大の危機なのである。

当初、ブッシュ元大統領は「敵はテロリストであって、イスラム教徒ではない」と言っていた。しかし、その言葉とは裏腹にイスラムはどんどん悪者にされていき、気がつけばアメリカの次の敵に仕立て上げられていた。今回の中東の反政府デモで、チュニジアもイエメンもヨルダンもエジプトも激しく揺れ動いた。政権が倒れ、次の政府が反米政権だとしたら、アメリカの軍需産業は大喜びしただろう。戦争する相手が増えれば増えるほど、自分たちの作ったミサイル・爆弾・武器・弾薬は消費され、莫大な利益が転がり込んでくるからである。

≪敵を育てて自分たちの武器を消費する≫

これがアメリカの軍需産業のビジネスだとすると、なるほどイスラム嫌悪が増長されるのも納得できる。悲しいことだが今はそんな大きな流れの中にイスラムが位置づけられている。かつての共産主義の代わりなのだから、今後何十年もイスラムは敵視され続けるのだろう。
テロとの闘い、…終わらない負の連鎖はアメリカの敵が変わるまで続くのかもしれない。

アイゼンハワー大統領
最後にアイゼンハワー大統領(第34代)の退任演説の一部を紹介したい。
「軍産複合体の影響力が、我々の自由や民主主義的プロセスを決して危険にさらすことのないようにせねばなりません。何ごとも確かなものは一つもありません。警戒心を持ち、見識ある市民のみが、巨大な軍産マシーンを平和的な手段と目的に適合するように強いることができるのです。その結果として安全と自由とが共に維持され発展して行くでしょう」

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